Vol. 5

うたかたの恋 '99.02.28.
無題 '99.02.28.
blue '99.02.26.
Key '99.02.25.
'99.02.17.
冬の朝 '99.02.15.
one '99.02.12.
'99.02.12.
nostalgia '99.02.07.
joker '99.02.06.

うたかたの恋



美しさに 憧れ
せつなさに ときめき
喜びに 涙する
夢のような ひととき
手に取れば
消えてしまう
はじける その時の
一瞬のため
さまよい
求める

無題



振り返るあなたに
背を向けた
鬼神のようだと
あなたが 言ったから
最後の笑顔を
贈るわ
ありがとう

blue



優しい言葉は いらない
だから 突き放して
温かな 眼差しも いらない
だから 冷たく笑って
独りでいたいだけなの
ねえ お願い
私の 羽根を
毟り取らないで
飛べなくなった鳥は
海の底に
沈んでしまうのよ
人魚姫のような
泡にもなれずに
沈んでしまう
あなたの 優しさが
私の 羽根を 毟り取る

Key



なつかしい 声は
余韻の記憶
かわらない部屋
あなたの 匂い
安心して
何にも
触れないから
少しだけ
この 空気に
包まれていたい
目を閉じて
流れるもので
最後にする
灯かりは
消さずに行くから
この鍵に
気付いて





あなたが 残した
ポートレート
静かな 水が
深い音色に
碧く 響く

こんな風に
あなたを 愛せたら
こんな風に
あなたを 守れたら
私の 空を
飛んでくれましたか

冬の朝



凍てついた硝子のような会話を
繰り返しながら
僕たちは 互いの
肌の ぬくもりだけを
求め合った
朝の 陽射しに
それだけで
笑顔を 取り戻せると
信じていた あの頃
忘れていたんだ
君の 肌も
朝の 陽射しも
なんの役にも たたなかった
君の心を
凍てつかせたのは
僕だったんだから

one



声にしてみたの
さよなら
軽い調子で
鼻歌まじりに
平絹と 戯れながら
笑い声 ひとつ

明けゆく空に
悪態 ひとつ
意地悪な 夜なんて
恐くはなかったわ

寝息たててる仔猫を
抱いて
もう なんでもないと
笑ってみたら
くしゃみが ひとつ
それから
涙が ひとつ





まどろみの中で
あなたの 背中に
伸ばした指が 宙に踊る
目覚めると
そうね やっぱり独り
涙はらう この指が
夢の記憶に 躊躇する
冷たい部屋の宇宙に
漂うだけの
白い指先
星屑が
剥がれ落ちそう

nostalgia



君に 逢いたい
そして 聴かせて欲しい
あの唄を
いまさら 涙 見せても
君は 驚かないだろう

苦しむ事に 馴れてはいるけど
もう少し 部屋の明かり
落としてくれないか

走り続けてきたんだ
真夜中の 道を
前しか見ていなかった
花を 差し出す君に
気付かぬふりを し続けた
遠い 昔の 恋物語

頼むよ あの唄を
聴かせてくれないか
忘れていても いいんだよ

君に 逢いたいだけなんだ

joker



無造作に
転がっている 言葉に
気付かぬふりして
靴紐を 結びはじめる

僕は
知ってるのさ 現実を
君の 知らない
僕の世界さ
皮肉まじりに 鼻で笑っているね
いいさ いつまでも そうして
化粧が 剥がれ落ちるまで
笑っていなよ

僕は
本気で 信じているんだ
僕の翼で 飛べるとね
幸福に なりたがってる君と
たいして 違わないだろう

憶えておきなよ
幸福は 自分でなるものさ
どこにも ぶら下がっちゃ いないんだ
気をつけないと
背中合わせの 不幸とすりかわる

僕は 行くよ もう
これ以上 付き合えない 悪いけど
愛し損なって 愛され損なった
似た者同士の 僕と君

僕は 行くよ もう
これ以上 付き合えない
悪いけど

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