Vol. 2

いつか忘れられる '96.04.
もう掴めないもの '95.11.
ある男の死 '94.05.
オマージュ '93.07.
君 へ '90.07.

いつか忘れられる



限られた時間
乗り越えられない壁
私が まだ あなたを 信じていた頃
どこにも 見えなかったものが
いま 見える
あの頃の 自由を手に入れたんじゃない・・・
いまの 不自由を 悔いているのでもない・・・
どうしようもない現実を
ゆっくりと 呑み込んでいる
ゆっくりと
あなたは 心だけが 自由な人
自由な心を 次から次へと みせつけて
私が 心開く前に いなくなる
いつも いつも 消えてしまう
なぜなの?
遠い日に 想い出が あるのなら
ひとりで 振り返る
でも あなたと 私の 想い出は
私が あなたを 探し続ける事ばかり
あなたの 横顔と 後ろ姿を 見つめ続け
私が 探すのを やめた時
はじめて 振り向いてくれた
私たち いつも 片想いでした
ふたりの 想いが みつめあった事なんて なかった
あんなにも お互いに 惹かれあっていたのに
ふたりとも 片想い・・・

何を 追いかければ
あなたに 想いが 届くのか
あなたの 怖がるものと
私の 恐れているものが
何だったのか わからないまま

無邪気な 時間が 流れ
かけがえのないものを
あなたの 胸に 残したまま
私は 夢の中まで
あなたを 探し続けた・・・

もう掴めないもの



どうすれば あの娘に 逢えるのか
教えて欲しい
ずっと 遠い昔の あの娘は
いつも 泣いていた
僕が 抱きしめると
いつも 泣いていた

僕たちは 求め合いながら
お互いを 否定しあっていた
僕は あの娘から 遠いこの街へ
逃げ出したんだ
何もかも すべてのものを
ぶち壊してしまいそうな自分が
恐ろしくなり 逃げ出した

そんな僕を あの娘は 知っていた
そんな僕を あの娘は 許した
そして
消えてしまった

ある男の死



眠ったまま 死ねたら 幸せだと
その男は 言った
自分の死さえも 選べなかった男は
朝の 目覚めが来ないことが
唯一 自由になれることだと いった
母の胎内から 生まれ出でる瞬間
これからの人生 嘆きの産声をあげる赤子と対照的に
この世と 別れられる 喜びの涙を
最期に 流すのだと 言った

そして 男は この世を 去った
望み通りに 眠りながら 夢から 覚めぬまま

自分の 涙に 流されぬよう
あるがままの 現実を 受け入れられるよう
逃げ出す 心を 押さえられるよう
自然の 営みに 感服しよう
もう 君の 姿が
もう そこには 無いことを
この目で 確かめよう

オマージュ



僕には 勇気が あるだろうか
君を 手に入れる 勇気があるだろうか
走り出す 勇気が あるだろうか
君は 恋人ではない
君は 友人ではない
僕にとっての 君は 青春そのものだった
心を見せたり 隠したり
そんな ゲームを 知る前の 君と僕
君を 欲しいと 想うのは
僕の なくした 青春への オマージュかもしれない
あまりにも 変らずに 輝く君への オマージュ
大人になった 君と僕は
求め合うものが 同じまま
違う道を 歩きはじめた
惹かれあうまま 離れ離れになった
君は 何も求めはしなかった
求めたのは いつも 僕ばかり

僕が いなくても 君は いきてる
君が いなくても 僕は いきてる
雨の 雫も きこえる
君の 瞳にうつる 星空もみえる
けれど
なくしたものだけが みえない
僕が 消えても
君は 僕を 探したりはしないだろう
僕は 君を 探し続けていた
やっと 見つけた君
その君を
手に入れる 勇気こそ
僕の
なくしたものかもしれない

君 へ



風と 逝ってしまった 君
あの日
僕たちは 互いに責め合った
望む事ばかりを 主張して
いたわり合うことさえ 知らないまま・・・
傷つけ合う事が 愛し合う事かのように・・・
そして
傷ついた自分をいたわるかのように
抱き合った
激しく
骨が きしむほど
皮膚が 熱くなるまで
君を この腕に 抱いた

「これが 最後ね」
別れ際の いつもの セリフ
僕を 追いかけてきたことなど
一度もなかった
僕たちは いつも 振り向く事なく
別な方へ 歩き出す

そして 逝ってしまった
ずるいよ 君
僕は まだ 一度も
君に 言ってなかったんだ
「ごめん」

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